《おくのほそ道》四月五日 〔008〕

《おくのほそ道》

当国、雲岸寺のおくに、佛頂和尚山居跡有。


  竪横の五尺にたらぬ草の庵
    むすぶもくやし雨なかりせば


と、松の炭して岩に書付侍りと、いつぞやきこえ給ふ、其跡みむと、雲岸寺に杖を曳バ、人々すゝむで共にいざなひ、若き人おほく、道の程打さハぎて、おぼえず彼麓に到る。山はおくあるけしきにて、谷道はるかに松杉くろ、く苔したヾりて、卯月の天、今猶寒し。十景尽る所、橋をわたつて山門に入。
さてかの跡はいづくの程にやと、後の山によぢのぼれば、石上の小庵、岩窟にむすびかけたり。妙禅師の死関、法雲法師の石室を見るがごとし。


 木啄も庵はやぶらず夏木立


と、とりあへぬ一句、柱に残侍し。

曾良随行日記》

一 五日 雲岩寺見物。朝曇。両日共ニ天気吉。


日光の先の黒羽で長逗留があったはず、そこまで来れば私もしばらく休めるかもと、算段していましたが、一日休んだだけで、きょうは芭蕉さん雲厳寺です。黒羽でも、けっこうあっちこっち出歩いているようですね。

それでもやはり旅立ち後、わき目もふらずにという旅程から解放された逗留先のこととて芭蕉のくつろぎうらやましいです。“若き人おほく、道の程(ほど)打さハぎて”というところなど、屈託のなさが感じられます。
雲厳寺には、芭蕉が江戸臨川寺で参禅したの仏頂の草の庵跡があるというのです。


芭蕉仏頂については、
http://www.bashouan.com/pfBucchouZenji.htm
↑の親サイト
http://www.bashouan.com/
は、もうご存知の方も多いと思いますが、一番網羅的かつ親切な《細道》サイトでしょう。
いずれ、ほかにも2,3基本的なサイト紹介します。

仏頂」で検索したらば、こんなおもしろいものにも出くわしました。
週末にゆっくり読みたいと思います。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~Taiju/bashoden_1.htm

・・・ここまでたどり着いて、私が「おくのほそ道」のこんな形での再読を思い立ったのが、この章の佛頂和尚の草の庵が、良寛の五合庵の生活を思い出させたことによることに、思い至りました。