稀有な年の「ほそ道」追跡

ところで、今年は、めずらしく芭蕉が奥州・北陸の旅をした年と、グレゴリウス暦太陰太陽暦の日付けがほぼ一致する年なのです。

ちょっと話がややこしいかもしれませんが、こういうことです。

・元禄二年三月二七日=1689年5月16日(グレゴリウス暦換算)
・2004年5月16日=平成十六年三月二十八日(太陰太陽暦換算)

つまり16日朝、晴れておれば、太陽の位置も、月の位置も、315年前の今日(1689年5月16日=元禄二年三月二七日〔旧暦〕)と、同じ状況――同じ時刻に日の出があり、西に芭蕉が見たのとほぼ同形の有明の沈む三ケ月(↓)――で見られたというとても貴重な日になるわけです。

“明ぼのゝ空朧々として、月ハ有あけにて、ひかりおさまれる物から、富士の峯幽に見えて、上野谷中の花の梢、又いつかはと心ぼそし。”

こうした幸運は、もちろん「おくのほそ道」の旅の間、ずっと続きます。

残念ながら雨で芭蕉は見られなかった「仲秋の名月」(元禄二年八月十五日=1689年9月28日)。まさに、今年の「仲秋の名月」も、9月28日です!。

・・・つまり、今年はグレゴリウス暦に換算して芭蕉を追っかけると、日の出・日没の時間も、月の形も、315年前とほぼ同じように体験できる稀有な年なのです。