《おくのほそ道》五月十五日 〔047〕

小黒崎、ミづの小島を過て、なるごの湯より、尿前の関にかゝりて、出羽の国に越むとす。此道、旅人稀なる所なれば、関守にあやしめられて、漸として関をこす。大山をのぼって、日既暮ければ、封人の家を見かけて舎リを求ム。


 蚤虱馬の尿する枕もと

曾良随行日記)

一 十五日小雨ス。 右ノ道遠ク、難所有之由故、道ヲかヘテ、二リ、宮。
〇壱リ半、かぢは沢。此辺ハ真坂ヨリ小蔵ト云かゝリテ、此宿ヘ出タル、各別近シ。
○此間、小黒崎・水ノ小嶋有。名生貞(ミヤウサダ)ト云村ヲ黒崎ト所ノ者云也。其ノ南ノ山ヲ黒崎山ト云。名生貞ノ前、川中ニ岩嶋ニ松三本、其外小木生テ有。水ノ小嶋也。今ハ川原、向付タル也。古ヘハ川中也。宮・一ツ栗ノ間、古ヘハ入江シテ、玉造江成ト云。今、田畑成也。
一リ半、尿前。シトマヘヽ取付左ノ方、川向ニ鳴子ノ湯有。沢子ノ御湯成ト云。仙台ノ説也。関所有、断六ヶ敷也。出手形ノ用意可有之也。一リ半中山。
堺田(村山郡小田嶋庄小國之内)。出羽新庄領也。中山ヨリ入口五、六丁先ニ堺杭有。