《おくのほそ道》五月二十一日 〔053〕

尾花沢にて、清風と、云ものを尋ぬ。
かれハ、富るものなれども、心ざし、いやしからず。都にも折々かよひて、さすがに旅の情をも知たれバ、日比とヾめて、長途のいたはり、さまざまにもてなし侍る。


涼しさを我宿にしてねまる也

曾良随行日記)

廿一日 朝、小三良ヘ被招。同晩。沼澤所左衛門ヘ被招。此ノ夜、清風ニ宿。


五月二十一日(G:7/7)、尾花沢5日目。我々の世では「七夕」です。


“富るものなれども、心ざし、いやしからず。”――芭蕉の清風評です。
“さまざまにもてなし侍る。”には、最上紅花の買付問屋・嶋田屋鈴木清風の知人(俳人)との交歓をセッティングすることも含まれていたのでしょう。

「涼しさを」の句は、そうした清風に対する挨拶句のようですが、清風宅ではなく前年改装なったばかりの養泉寺の居心地のよさかもしれません。


句中の《ねまる》は、山形の?方言などとどの注釈書にも書いてありますが、我が富山県でも使うかなり広範囲な方言のようです。

《ねまる》についてのおもしろいページです。
http://www.town.yokota.shimane.jp/yokotanokotoba/07.htm

ところで、「方言」は、地域に残された古語であることが多いようです。適切な例をすぐに思い出しませんが、富山の方言でもそうした事例がけっこうあると思います。

「ねまる」は、古語辞典に出ていました。
なお、古語「睨む〔ネム〕」から「睨み据える→じっとしている→うずくまる」と転義して、「ねまる(座る)」という動詞がうまれたとある本にあります。


・清風年譜
http://www.netlaputa.ne.jp/~a_boa/html/haiku/seifu02.htm

芭蕉・清風歴史資料館」については;
http://www.city.obanazawa.yamagata.jp/shoko/html/siryo00.htm